労働事件 For Corporate Client
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労働紛争(労働事件)を解決する機関や手続としては以下のものがあります。
- (1) 裁判所の通常訴訟、少額訴訟、仮処分、労働審判、調停
- (2) 労働委員会
- (3) 都道府県労働局
- (4) 労働基準監督署
- (5) その他
以下には、「労働審判」と「労働委員会」について簡単に説明いたします。
労働審判
労働審判制度は、労働者個人と使用者(会社・経営者)との間の
- ● 解雇・雇止めをめぐる問題、
- ● 賃金・退職金・解雇予告手当をめぐる問題、
- ● 配転・出向をめぐる問題、
- ● 懲戒処分をめぐる問題
などの個別労働紛争を扱う手続です。
会社・経営者と労働組合の間の集団的労働紛争は扱いません。
通常、労働者から、地方裁判所への申立によって手続が開始されます。(使用者(会社・経営者)からの申立ても可能です。)
申立があると裁判所は、事件ごとに労働審判員(労働問題に関する専門的知識を有する民間人が選ばれます。)2名を指名し、裁判官(労働審判官)とともに3名で、労働審判委員会を組織します。
原則3回までの期日しか開かれません。裁判所は、迅速かつ適正に解決することを目指します。従って、当事者にも、迅速かつ適正な解決ができるよう、第1回目の期日までに必要な主張や証拠の提出の準備を行うことを求めます。以前に訴訟を経験された企業は、訴訟の時とはスピード感が全く違うことにご注意ください。
期日の中で、裁判所は、話し合い(調停)による解決の可能性を探ります。名古屋地裁では、毎年70%以上の案件が調停で成立しています。
調停(当事者の合意による解決)が成立しない場合には、裁判所は、申立人の申し立てた事項について、事件の実情に応じた審判を出します。審判の内容に異議を申し立てると、通常訴訟の手続に移行します。
労働審判の流れ
労働委員会
労働委員会は、使用者(会社・経営者)と労働組合との間の集団的労働紛争を解決する目的で、労働組合法によって設置された行政委員会です。
- (1) 各都道府県に設置された都道府県労働委員会(都道府県の機関)
- (2) 中央労働委員会(国の機関)
があります。
労働委員会では
- (1) 労働争議の調整(あっせん、調停、仲裁)
- (2) 不当労働行為の審査
- (3) 個人の労働紛争のあっせん(行っていない労働委員会もあります)
などを取扱います。
労働争議の調整は、使用者(会社・経営者)と労働組合との間で、賃金・勤務時間などの労働条件に関する問題について、自主的な解決が困難なときに、(原則として)会社か労働組合からの申請により、争議を解決するための調整を行う手続です。
不当労働行為の審査は、労働組合または労働者からの、不当労働行為救済の申立て」があった場合に、不当労働行為の事実の有無を審査し、不当労働行為の事実が認められた場合には、「救済命令」を出す手続です。
不当労働行為審査は、行政機関の手続ですが、裁判手続に準じた手続により不当労働行為の存否について審査します。ただし、労使間に話し合いの機運が生じた場合には、いつでも、積極的に和解による解決を図ります。
不当労働行為審査の流れ
個人の労働紛争のあっせんは、個々の労働者と使用者(会社・経営者)との間で発生した労働条件などをめぐって紛争が発生した際に、労働者または使用者(会社・経営者)からの申請により、紛争解決のためのあっせんを行う手続です。都道府県労働委員会の中には行っていないところもあります。