森法律事務所(愛知・名古屋の弁護士)

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労務問題・労働事件 Q&A For Coporate Client

  • 労務問題・労働事件をめぐる諸問題は、個別の事情によってそれぞれ異なりますが、以下には、一般論でお答えできる範囲のQAをいくつかご用意しました。企業の実情に応じた具体的なご質問については、当事務所での法律相談をご利用ください。

    労務・人事問題

    平成22年4月施行の改正労基法により、時間外労働の割増率はどのように変わりましたか。

    1か月60時間を超える時間外労働について、法定割増賃金率が25%から50%に引き上げられました。 ただし、次の中小企業については、当分の間、法定割増賃金率の引き上げは猶予されます。

      (1)資本金の額または出資の総額が

    • 小 売 業:5000万円以下
    • サービス業:5000万円以下
    • 卸 売 業:1億円以下
    • 上記以外:3億円以下
      • または、(2)常時使用する労働者数が

      • 小 売 業:50人以下
      • サービス業:100人以下
      • 卸 売 業:100人以下
      • 上記以外:300人以下

      ※この中小企業に該当するか否かは、事業所単位ではなく、企業(法人または個人事業主)単位で判断されます。

    ミスが多く、やる気のみられない従業員を解雇しようと思います。30日前に解雇予告をすれば解雇することができますか。

    使用者(会社・経営者)が従業員(労働者)を解雇する場合について、労働契約法16条は「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と規定しています。この規定は、従前からの「解雇権濫用」についての判例法理を明文化したものです。従業員を解雇するには、客観的に合理的な理由社会的相当性が求められるのです。

    具体的にどのような場合に解雇が有効になるか、個別の事情を慎重に検討したうえで判断せざるを得ませんが、一般的には、使用者側(会社側・経営者側)が考えているよりもずっとハードルが高いということは言えます。安易に考えて解雇してしまって、(元)従業員から解雇無効を主張され労働紛争になってしまったという事態に至る前に、当事務所にご相談ください。

    従業員Aが突然失踪してしまい、1か月も会社に出てきません。Aの家族も所在は分からないと言います。Aを解雇するにはどういう手続をとる必要がありますか。

    まず、就業規則において「一定期間行方不明となった場合は、自然退職とする」という規定があれば、解雇ではなく、この自然退職規定に基づいて退職したものとして扱うことができます。

    このような自然退職規定がない場合には、長期の無断欠勤を理由として(就業規則に具体的規定があればそれに基づき)解雇することができます。ただし、解雇は、会社からAに対する「意思表示」ですので、その効力が発生するには、意思表示がAに到達する必要があります。

    そこで、このような場合には、裁判所での「公示による意思表示」という手続を利用して解雇を通知するという方法をとることができます。

    女性社員Aら3名から、忘年会の席で部長からセクハラを受けたと訴えがありました。業務時間外のことですし、女性側の服装や対応にも問題があったようにも思います。このような場合でもセクハラとして、会社に責任が発生する場合があるのでしょうか。

    セクハラ(セクシャルハラスメント)とは、「職場での相手の意に反する性的言動」を言います。 「職場」とは、労働者が業務を遂行する場所を言いますが、それ以外の場であっても、忘年会など実質上職務の延長と評価される場合は、「職場」とされます。

    職場でセクハラが発生した場合には、加害者である従業員(このケースでは部長)が被害者に対して損害賠償責任を負うだけでなく、使用者(会社)もまた、職場環境配慮義務や加害者に対する監督を怠ったとして、債務不履行責任(民法415条)や使用者責任(民法715条)に基づく損害賠償請求を受けることになります。

    女性側の服装や対応がどのようなものであったか分かりませんが、その内容如何によって慰謝料額が減額(過失相殺)されることはあっても、実際にセクハラ的な言動があったのであれば、部長や会社の責任がゼロになるケースは少ないといえます。

    会社(経営者)は、双方から言い分を十分に聞くだけでなく同席した他の従業員からの事情を聞くなどして事実関係を十分に調査したうえで、適切な対応をすることが求められます。

    パワハラとは何ですか。

    パワハラ(パワーハラスメント)とは、一般的に、「職権などのパワーを背景にして、本来の業務の範疇を超えて、継続的に人格と尊厳を侵害する言動を行い、就業者の働く関係を悪化させる、あるいは雇用不安を与えること」とされています。

    平成17年に実施された中央労働災害防止協会(厚生労働省の外郭団体)による東証1部上場企業を対象とした調査において、

    • 約4割の企業で、パワハラまたはそれに類似した問題が「発生している」または「発生したことがある」
    • ⑵ パワハラの発生が「ある」「あった」企業の8割以上で、パワハラを受けた社員のうちある程度の者にメンタル面で何らかの問題が生じている
    • 8割以上の企業がパワハラ対策を重要と認識という結果が報告されています。

    日頃、業務上、指揮命令する関係にある上司と部下において、どういう行為がパワハラになるのかの判断は難しい面もありますが、一般論としては「業務上必要な範囲を逸脱していないかどうか」をメルクマールとすることになります。

    上司の行為がパワハラに該当し、部下にメンタルヘルス不調などによる損害が発生した場合には、その上司に損害賠償責任が発生するだけでなく、使用者(会社・経営者)もまた、職場環境配慮義務や上司に対する監督を怠ったとして、債務不履行責任(民法415条)や使用者責任(民法715条)に基づく損害賠償請求を受けることになります。

    従業員のメンタルヘルス疾患について、会社・経営者に損害賠償責任が生じる場合がありますか。労災認定がされた場合は、会社・経営者の責任はどうなりますか。

    労働契約法5条において、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命・身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と使用者(会社・経営者)の安全配慮義務が定められています。会社・経営者がこの安全配慮義務に反して、従業員に損害が発生した場合には、会社・経営者は民法上の損害賠償義務を負うことになります。

    過重労働やパワハラを原因として、従業員がメンタルヘルス疾患を患った場合(その結果自殺した場合)に、会社・経営者の責任を認める裁判例が増えています。

    ところで、従業員が業務に起因して疾病にかかったとして労災認定がされた場合には、労災保険から給付を受けることができます。 労災認定がされ、さらに会社・経営者に安全配慮義務違反に基づく損害賠償義務が認められる場合には労災給付との調整がされ、会社・経営者が負担すべき損害から、労災保険から既に同一の事由給付がなされた分は控除されます。

    メンタルヘルス不調の疑いのある従業員に、専門の医療機関を受診するよう命じることができますか。

    前問で回答したように会社・経営者は従業員に対して安全配慮義務を負い、これに違反して従業員に損害が発生した場合には、賠償義務を負担することになります。従って、会社・経営者は安全配慮義務を尽くすためには、従業員の健康状態を知る必要がありますから、そのために、会社・経営者は、メンタルヘルス不調の疑いのある従業員に対して、就業規則に規定がなくとも、専門の医療機関での受診を命じることができます。

    労働事件

    労働紛争(労働事件)を解決するための手続としては、どのようなものがありますか。

    労働紛争(労働事件)を解決する機関や手続としては以下のものがあります。

    • (1) 裁判所の通常訴訟、少額訴訟、仮処分、労働審判、調停
    • (2) 労働委員会
    • (3) 都道府県労働局
    • (4) 労働基準監督署
    • (5) その他

    裁判所から労働審判期日の呼出状が届きました。まずは会社の者だけで出頭し、審判期日での様子を見て必要と判断してから弁護士を代理人に選任すればよいでしょうか。

    すぐに弁護士に相談する必要があります。 労働審判は、原則として3回までしか期日が開かれません。そのため、裁判所は、第1回目の期日で、双方の主張・立証を尽くさせようとします。

    通常訴訟のように、相手方の主張に対して「次回までに準備して反論します」という態度は認めてもらえません。また、原則として労働審判申立てがされた日から40日以内の日に第1回の期日が開かれることになっています。反論の準備が間に合わないからといって、第1回目の期日を漫然と迎えた場合には、会社の主張を理解してもらえず、不本意な結果に終わる危険があります。

    そのため、労働審判事件では第1回期日までの短い期間に、申し立てされた内容に対して、いかなる反論ができるのかを検討し証拠を用意するなど、十分な準備をする必要があるのです。第1回の期日までの間の準備をいかに行うかが重要ですので、まずは当事務所にご相談ください。

    労働審判の主張・立証はどのように行うのですか。

    労働審判を申立てられた使用者(会社・経営者)は、第1回目の期日前の提出期限までに答弁書を作成して提出することを求められます。

    答弁書には、申立の趣旨に対する答弁、申立書に記載された事実に対する認否、答弁を理由づける具体的な事実だけでなく、

    • (1)予想される争点および当該争点に関する重要な事実、
    • (2)予想される争点ごとの証拠、
    • (3)当事者間のなされた交渉その他の申立てに至る経緯の概略、を記載することになっています。

    労働審判を申し立てられた使用者(会社・経営者)は、会社に不利な審判が下されないよう(あるいは不利な調停が成立しないよう)、労働審判員会に会社の主張を理解してもらえるよう、これら答弁書に会社に有利な主張や証拠をもれなく記載する必要があります。

    また、労働審判の審理では口頭主義が採用されていて、申立書や答弁書以外の書面の提出は原則として認められていません。各当事者はさらなる反論があれば期日において口頭で行うことになります。「次回までに反論の(準備)書面を提出します」という訳にはいかず、その場で説明することを求められます。

    労働審判では、調停(話し合い)で解決することが多いと聞きました。調停の成立率はどのくらいですか。

    70%以上の事件で調停が成立しています。調停が成立すると「裁判上の和解」と同じ効力が発生します。

    労働審判はどのようなときに訴訟に移行するのですか。

    労働審判手続は、原則3回の期日で終了します。期日において和解が成立すれば事件は終了しますが、和解が成立しない場合には、労働審判委員会が審判(労働審判)を行います。この審判に対して、審判の告知日(または審判書の送達日)から2週間以内に使用者・労働者のいずれか一方から異議が出ると審判は失効して、審判の申立てがあった時に遡って訴訟の提起があったものと扱われ、手続は訴訟に移行します。

    労働基準監督署(労基署)は何をするところですか。

    労働基準監督署(労基署)は、労働基準法や労働安全衛生法などの労働基準関係法令の実効を確保するため事業者を監督するために設置された監督機関です。全国に321署が設置されています。労基署内の労働基準監督官は、都道府県労働局の指揮監督を受け、管内の個別事業所に対し監督を行い、労働基準関係法令に違反する事実があれば是正勧告(是正指導)を行います。また、労働基準監督官は労基法違反の罪について、司法警察官の権限(逮捕権・捜査権)を持ち、重大・悪質な労基法違反の事案については刑事事件として送検することができます。

    労働基準監督署(労基署)の是正勧告とはどういうものですか。

    是正勧告とは、労基署の労働基準監督官が事業所に対する監督権に基づいて立入調査等を行った結果、労基法違反の事実を発見した場合にその是正を勧告・指導することです。是正勧告は行政指導として行われるものですから、例えば賃金不払いの是正勧告の場合に、事業所に対して賃金支払いを命じる権限があるわけではありません。しかし、是正勧告してもなお事業所が是正(改善)をしない場合には、悪質な労基法違反として書類送検(さらに公表)され刑罰が科される可能性があります。

    労働基準法(労基法)違反には刑罰が科されるというのは本当ですか。

    本当です。労基法は、労働条件の最低基準を定めた法律で、違反した場合には刑罰が科されます。会社等の法人が使用者の場合には、法人のために違反行為を実際に行った者の他に、法人の代表者もまた刑罰が科されることが規定(両罰規定)されています。

    • ・15歳未満(13歳以上の児童を労基署の許可を受けて使用した場合を除く)の未成年者を労働させた場合
      →1年以下の懲役又は50万円以下の罰金
    • ・時間外割増賃金の不支給
      →6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金
    • ・就業規則作成義務違反
      →30万円以下の罰金

    労働局(紛争調整委員会)の「あっせん」はどういう制度ですか。

    都道府県労働局のあっせんは、労働者、使用者(会社・経営者)のいずれかが労働局長宛に「あっせん申請」を行うことで開始される都道府県労働局が行う紛争処理手続です。労働者と使用者(会社・経営者)との間の、労働条件その他労働関係に関する事項についての個別労働紛争(ただし募集、採用に関する紛争は対象外)を対象とし、労働者と労働組合との間の紛争や、労働者同士の紛争は対象にしません。

    相手方があっせんに参加し、あっせん期日が開かれると、弁護士、大学教授などの専門家のあっせん委員によって、双方から事情を聴取し、話し合いによる解決の途を探ります。しかし、その期日(通常2時間程度まで)に合意にいたらない場合には、打ち切りとなります。

    1年前に解雇した元従業員の問題について、その従業員が解雇後に加入した労働組合から団体交渉の申し入れがありました。すでに当社の従業員ではないので無視しようと思っていますがそれでよいでしょうか。

    解雇された労働者が加入している労働組合が、解雇撤回などを求めて団体交渉の申し入れをしてきた場合に、これを拒否すれば団体交渉拒否として不当労働行為にあたるとされています。 解雇後長期間が経過した場合でも、解雇後約7年も経過した元従業員に関する団体交渉申し入れについて団交応諾義務を認め、これを拒否した会社・経営者には不当労働行為が成立するとした最高裁の判例もあります。 解雇したからもう関係ない、無視してもよいということにはなりません。労働問題に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。

    労働組合からの団体交渉申し入れがありました。組合の要求には応じるつもりは全くないのですが、とりあえず話を聞くだけは聞いてみようとは思います。気をつけることはありますか。

    団体交渉は、形だけ応じればよいというものではなく、その対応方法が誠実でないと判断される場合は、不誠実団交として不当労働行為になります。労働委員会の救済申立がされる可能性もありますから、団体交渉の申し入れがあった場合は、当事務所にご相談ください。

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