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遺言書の作成・遺言の執行

遺言書の作成・遺言の執行 For Indivisual Client

  • 遺言

    「自分が先に逝ったとき、残された妻のために自宅を残してやりたい。」とか「親不孝の長男には財産をやりたくない。」など、自分の死後に法定相続分とは異なる内容で、財産を処分したいとき、あるいは、相続人の誰かを排除する訳ではないけれど「あれは妻に、これは長男に」と自分の思いを受け継いでくれる者に特定の財産を承継させたいという場合もあります。そのような場合は、遺言書を作成する必要があります。

    「私の子どもたちが財産で揉めるはずがない。話し合って分けるだろう」と思われても、相続開始後、まさに血肉の争いを演じることも少なくありません。

    遺言は「要式行為」といって、法律で、要式が厳格に定められています。「私の子どもたちだから、私の言いたいことは理解できるはずだ」と、要式に反した遺言書を作成した場合、その遺言は無効とされて、せっかくの思いが実現しないことになりかねないのです。

    遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります(これらを「普通方式の遺言」と言います。他に、「特別方式の遺言」がありますが、説明を割愛します。)。

    この3種類のそれぞれ短所・長所がありますが、作成にあたっては、まずはどの要式の遺言にするかを決める必要があります。

  • 自筆証明遺言

      自筆証書遺言として有効に成立するためには、
    • (1) 遺言の全文と日付を自書すること
    • (2)署名、押印すること
    • が必要です。

    ワープロ打ちの書面は無効になります。録音、録画の方法も認められません。
    また、「平成24年5月吉日」というのは特定の日付を記載したものではないとして無効になります。

    署名は、遺言内容を記載した書面に氏名(氏と名)を自書で記載して下さい。押印は、認め印でも構いません。遺言書が複数枚にわたるときは、契印した方がよいでしょう。

    加除(訂正)するときは、「変更した場所を指示し、変更した旨を付記してこれに署名したうえで、変更した場所に印を押す」(民法968条2項)必要がありますので注意して下さい。

    自筆証書遺言は費用をかけずに作成できるという長所がありますが、偽造、変造、隠匿されるリスクがあります。
    また、病気などで手が震えて「自筆できない」場合は、作成できません。また、公正証書遺言と比べて、相続開始後にその有効性についてトラブルが生じるリスクがありますし、せっかく作成しても発見されずに終わってしまう可能性もあります。

    自筆証書遺言、秘密証書遺言は、相続開始後、遅滞なく、家庭裁判所に提出して、検認を請求しなければなりません。

  • 秘密証明遺言

      秘密証書遺言は、
    • (1) 遺言者が作成した書面に署名押印する。
    • (2) その書面に封をして、(1)に使用した印で封印する。
    • (3) 遺言者が、(2)の封書を公証人と証人2人に提出して、自分の遺言書であることと氏名住所を述べる。
    • (4) 公証人は、(3)の提出日と遺言者が述べた事実を封紙に記載して、遺言者と証人とともに署名押印する。
    • という方法で作成します。

    作成に公証人、証人が関与しますが、遺言の内容は秘密にすることができます

    (1)の書面は、自筆でなくてもよいので、ワープロ打ち書面でも構いませんが、加除、訂正は自筆証書遺言と同じように厳格な要式が求められます。

    秘密証書遺言は、公証役場で作成した事実は記録されますが、内容は保管されませんので、紛失や隠匿のリスクを回避することはできません。
    相続開始後に、速やかに家庭裁判所に提出して「検認、開封」する必要があります。

  • 遺言の執行

    遺言の執行とは、遺言の内容を実現する行為をいいます。

    遺言には、「執行」が必要でないものもありますが(相続分の指定、特別受益の持戻しの免除など)、遺言執行者又は相続人による執行行為が必要なものがあります。

    ● 遺言執行者が必要な遺言事項

    遺言執行者による執行が必要なものとしては、認知、推定相続人の廃除・取消があります。これが遺言されているけれども、遺言書に遺言執行者が指定されていない場合は、家庭裁判所に遺言執行者の選任を求める必要があります。

    ● 相続人全員で執行してもよい遺言事項

    特定の財産を特定の相続人に「相続させる」遺言、法定相続分を超える相続分の指定、遺贈、財団設立のための寄附行為、信託の設定、祖先の祭祀主催者の指定、生命保険金の受取人の指定・変更は、遺言執行者が指定あるいは選任されていなくとも、相続人全員が共同して執行することも可能です。

    遺言で遺言執行者が指定され、その指定された人が執行者になることを承諾した場合は遺言執行者が執行します。また、遺言で遺言執行者が指定されていない場合でも、相続人その他利害関係人が家庭裁判所に対して遺言執行者の選任を請求することができます。裁判所によって遺言執行者が選任された場合は、相続人全員ではなく、遺言執行者が執行行為を行います。

    ● 遺言執行者の権限

    遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有します。遺言執行者は、この権限に基づいて遺言の内容を実現します。
    遺言の内容が財産の処分に関するものであるときは、遺言執行者は財産目録を調整して、相続人に交付します。その上で、遺言の内容に従った財産の引渡や移転登記手続などを行います。

遺言書の作成・遺言執行 Q&A For Indivisual Client

遺産相続をめぐる諸問題は、ご家庭の事情によってそれぞれ異なりますが、以下には、よくご質問のある点について一般論でお答えできる範囲のQAをいくつかご用意しました。

それぞれのご家庭の実情に応じた具体的なご質問については、当事務所での法律相談をご利用ください。

夫婦連名で遺言書を作成してもよいですか

一通の遺言書に複数の者が遺言することは禁止されており(共同遺言の禁止)、このような遺言は無効になります。
夫婦が同時に遺言書を作成する場合にも、それぞれ独立して作成する必要があります。

遺言を撤回できますか。

一度書いた遺言を書き換えることは自由

一度遺言書を作成しても、その後いつでもその内容を変更したり撤回することができます。これは、自筆証書遺言でも公正証書遺言でも同じです。 遺言の変更、撤回の方法としては、次の遺言書で、前の遺言(○年○月○日作成の遺言)を撤回するという方法があります(遺言の方式による撤回)。 また、遺言書に「撤回する」と書かれていなくても、後に作成された遺言が優先されますので、前の遺言で「自宅の土地建物は長男に相続させる」と書かれてあり、後の遺言では「自宅の土地建物は長女に相続させる」と矛盾する内容の遺言があれば、後の遺言が優先され、これと矛盾する前の遺言は撤回されたものとみなされます

3年前に、財産の大部分を「長女に相続させる」という内容の遺言書を作成したのですが、先日、長女が先に亡くなってしまいました。遺言書を作成し直す必要がありますか。それとも、この遺言書のままで、長女の代わりに長女の子どもたち(孫)が相続できるのでしょうか。

Aが「Bに相続させる」という内容の遺言を作成したが、相続開始時(Aが亡くなったとき)に既に、Bが亡くなっていたとき、Bの子が代襲相続するのか、それともその遺言は無効になるのかについて争いがありましたが、近年、遺言者が「Aの代襲相続者等に遺産を相続させる意思を有していたとみるべき特段の事情がない限り、遺言は効力を生じない」という最高裁判例が出ました(平成23年2月22日)。
従って、長女が亡くなった時点で、遺言書を改めて作成する必要があります

遺言は、後に作成したものが優先されると聞きましたが、公正証書遺言の後に自筆証書遺言を作成した場合でも後のものが優先されるのでしょうか。遺言書を作り直したいのですが、最近、歩行が困難なため公証役場までに出向くのが難しいのです。

公正証書遺言と自筆証書遺言に優劣はありません。後で作成された遺言書が優先されます。
ただし、前に公正証書遺言を作成されたのは、後日の争いが生じないよう偽造・変造や隠匿されるおそれがないと考えられたからでしょうから、自筆証書遺言では不安を感じられるかもしれません。
歩行が困難で公証役場まで出向けないとのことですが、そのような場合、公証人に出張してもらって公正証書を作成してもらうという方法もあります。

検認とは何ですか。

遺言書の保管者は、相続の開始(即ち遺言者の死亡)を知ったら遅滞なく、遺言書を家庭裁判所に提出して、遺言書の内容を確認してもらう手続をとる必要があります。これを検認といいます。 検認をしないと遺言が無効になる訳ではありませんが、検認を怠ると過料の制裁があります。
遺言者から遺言書を預かった人、あるいは亡くなった後に遺言書を発見した人は、開封しないで、家庭裁判所に遺言書検認の申立てをしなければなりません。 ただし、公正証書遺言の場合は、この検認手続は不要です。

遺言書は何歳から作成できますか。

遺言は満15歳になればすることができます。
年齢の上限はありません。しかし、有効な遺言をするには、遺言書を作成する時点で、遺言能力(遺言の意味や遺言書を作成していることを理解する能力)が必要です。この遺言能力がなく作成された遺言は無効です。
なお、事理弁識の能力がないとして家庭裁判所によって成年後見が開始された成年被後見人についても、その能力を一時回復したとき医師2人以上の立ち会いのもとで、遺言をすることができます。

入院中で公証役場に出向くことができませんが、公正証書遺言を作成してもらうことはできますか。

公正証書は、公証役場に出向いて作成するのが原則ですが、入院中の場合などは、公証人に病院まで出張してもらい作成することができます。

父が亡くなった後、書棚から封印された封筒が出てきたので開封したところ、遺言書のようでした。問題はありますか。

遺言書の保管者は、遅滞なく、遺言書の検認手続をとらなければなりませんし、開封された遺言書は、家庭裁判所での検認手続において相続人の立ち会いのもとでなければ開封することができません。
封印された遺言書を家庭裁判所以外で開封した者は、過料の制裁を受けることがあります。しかし、封書に「遺言書」であることの記載がなく、封をあけて初めて遺言書であることがわかったような場合は開封しても仕方ありません。その場合でも、家庭裁判所で検認手続をとった方がいいでしょう。

亡くなった母の自筆証書遺言が出てきましたが、遺言書に記載された作成日は、母は認知症が進んでいて、遺言書が書けたはずがありません。

遺言書の形式が整っていても、遺言者の意思に基づかない遺言は、遺言能力がなく作成されたものであって無効です。
ただし、この遺言能力は、遺言書を作成した時点にそれがあったかどうかが問題になります。遺言者の認知症が進んでいた場合でも、一時的に遺言能力を回復した場合もありえます。
遺言能力を争い遺言の無効を主張するには、地方裁判所に遺言無効確認訴訟を提起して、遺言の有効・無効を確定する必要があります。 裁判所は、遺言者の遺言作成前後の言動や遺言の内容から、遺言者の遺言書作成の意味や遺言書の内容を理解する能力があったかどうかを証拠に基づいて判断することになります。

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