- 破産について弁護士に相談後どういう流れで進むのかを知りたい。
- 相談後は、会社や経営者は何を検討すればいいのか知りたい。
- 破産の開始決定をもらうまでにどういう準備をするのか知りたい。
このページでは、破産について弁護士に依頼するとどんな流れで進んでいくのか疑問に思ったり、不安を抱いている経営者のために、森法律事務所にご相談をいただいてから、破産手続の開始決定が出るまでの間に、
●弁護士と一緒に検討していただくこと
●準備し対応していただくこと
●弁護士が行うこと
について、初回のご相談から破産手続開始決定までの時間の流れに沿って説明します。
01 初回のご相談
森法律事務所の法律相談では、以下[1]~[5]の点について説明・検討します。
資料がどの程度揃っているかなどによって、一回では判断できずに、数回のご相談が必要になる場合もあります。
あるいは、経営者の中には、その後の経営状況を見ながら判断したいとお考えになって、数回にわたってご相談に来られる方もいらっしゃいます。
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1 破産申立の要否を検討します。
会社(法人)の事情、具体的には、
●事業の内容、継続可能性
●債権者の数、負債額
●税金や社会保険料等の滞納状況
●いつ資金ショートしそうなのか
●財産の内容(特に換価できる(お金に換えられる)財産の有無)
●担保の設定状況 等
会社(法人)の実情をじっくり伺って、破産申立がベストの選択なのか、破産を回避する方法はないのかを検討します。※ご用意いただきたい資料
- (1) 会社(法人)の決算書、税務申告書 2期分
- (2) 事業の内容がわかる資料(会社案内、HP等)
- (3) 会社(法人)の商業登記事項証明書(コピー)
- (4) 会社(法人)が所有する不動産の登記事項証明書(コピー)
※(1)は必ず御用意ください。
(2)以下は御用意が間に合わないようでしたら無くても大丈夫です。※従業員等に知られないように、気を付けてご準備ください。
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2 破産手続に必要な費用を準備できるかを検討します。
負債の額、債権者数、財産の内容、従業員問題、その他の事情(事業所の数、産業廃棄物の内容等)を伺って、予想される費用(予納金、弁護士費用等)をお伝えします。
そのうえで破産費用をどうやって準備するかを検討していただきます。
多くの場合は、預金、保険の解約金、回収した売掛金、当面の事業活動に不可欠ではない資産の処分代金などから準備します。
しかし、預金・保険の解約やその他の財産の処分によって、他の人(従業員も含む)に、会社(法人)の破産の準備中であることを知られるリスクが伴うので、費用の準備は慎重に行う必要があります。
この点について、会社(法人)の事情を伺ったうえで、ご相談のときに丁寧にご説明いたします。 -
3 破産の申立てに必要な準備についてご説明いたします。
破産の申立てにあたっては、破産費用の他にも資料の準備等が必要です。
また、準備中に気を付けていただきたいことがあります。
その内容について丁寧にご説明いたします。 -
4 破産手続をとると従業員はどうなるかについてご理解いただきます。
破産手続をとる場合は、(極めてレアケースを除き、)会社(法人)の事業を廃止します(事業を廃止する日をXdayといいます)。
そのため、従業員の雇用を続けることはできないので、従業員を解雇することになります。
会社が解雇する場合、解雇予告手当を支払う必要があります。
その準備ができるのかどうかも検討します。
その他、従業員にまつわる問題についてご説明いたします。 -
5 破産による関係会社、保証人、代表者とその家族などへの影響について検討します。
「会社の破産によって、子会社や取引先がどういう影響を受けるのか。」
「保証人はどうなるのか。」
「代表者と家族の生活はどうなるのか。」経営者が心配されるこれらの点について、会社(法人)の実情を伺い、どういう影響が生じるのか、悪影響を最小限にする方法は何か等を検討いたします。
02 破産申立の意思決定⇒正式受任
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1 破産申立の意思決定⇒正式受任
破産を決断され、森法律事務所にご依頼を頂きましたら正式な受任となり、弁護士が代理人となります。
会社の破産を決断するには、本来の順序としては、取締役会設置会社の場合は、取締役会を開催して、会社として破産申立の意思決定をする必要があります。
しかし、取締役会設置会社でも、多くの中小零細企業では、
他の取締役が動揺して混乱が生じることを避けるために、- (1) まずは社長(代表者)が決断する。
- (2) 他の取締役にも秘密のまま準備を進める。
- (3) Xdayの直前に、他の取締役の同意をもらう。
という順序で意思決定がなされています。
どのタイミングで他の取締役に破産の意思を伝え、同意を貰うかについても、慎重に決める必要がありますので、よくご相談したいと思います。
ところで、裁判所に破産の申立てをした後、裁判所に開始決定をもらうためには、本来は、破産原因(その会社が「債務超過または支払不能」であること)を疎明する(明らかにする)必要があります。
しかし、取締役全員の同意により破産の申立てをする場合は、破産法上「債務超過または支払不能」という破産原因についての疎明が不要とされています。
そのため、取締役全員の書面による同意を得ておいて、取締役会を開催しないという方法もよくとられています。なお、「取締役会が開けない」「反対する取締役がいる」「行方不明の取締役がいる」「病気入院中の取締役がいる」という事情がある場合には、取締役の1名だけが申立人となって会社の破産申立をすることもできます。
この場合を「準自己破産の申立」といいます。 -
2 Xdayの検討と決定
Xdayとは、会社(法人)の事業を廃止し、その事実を従業員・債権者・取引先に通知する日のことです。
Xday以後に生じるいろいろなことを想定して、Xdayをいつにするかを検討し、決定します。 -
3 Xdayまでのスケジュールの検討と決定
Xdayを決めたら、Xdayまでに揃えておくべき資料を確認し、どういう順序で用意するかを検討します。
また、再度、「破産を検討中に気を付けるべき点」を確認します。 -
4 資料の準備
裁判所に破産申立をするために必要な資料を準備します。
しかし、この段階は、まだXday前のため、水面下での準備となります。
破産の準備をしていることを従業員や取引先に気付かれないよう注意しながら、できる範囲で、必要な資料を揃えていきます。(1) 債権者関係 請求書、契約書(借入金、買掛金、リースなど) (2) 税金関係 滞納税金の督促状、納税通知書など (3) 従業員関係 従業員名簿、賃金台帳、タイムカード
雇用保険被保険者を確認できる資料
社会保険被保険者標準報酬決定通知書等の被保険者を確認できる資料
就業規則、賃金規程、退職金規程など(4) 財産関係 不動産登記事項証明書、保険証券、売掛金、預金通帳など (5) その他 賃貸借契約書など ※Xday以後は、銀行預金(借入先銀行のみ)は凍結されてしまいますので、この頃までに、裁判所に納める予納金等の費用をお預かりします。
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5 債権者リスト等の作成
Xdayに債権者と取引先に弁護士から受任通知を発送する準備として、当事務所にて、債権者と取引先の住所データを用意し、債権者リストと売掛先リストを作成します。
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6 従業員対応の準備の検討
- (1) 従業員の解雇のタイミングと方法を決めます。
- (2) 解雇通知書を用意します。
- (3) 解雇予告手当の計算をし、解雇予告手当を支払うことが可能か否かを検討します。
※これらの準備を、どのタイミングで行うかを社長と相談して決定します。
03 Xday
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1 事業の廃止
Xdayとは、会社(法人)の事業を廃止し、その事実を従業員・債権者・取引先に通知する日のことです。
会社(法人)は、まず事業を廃止し、事業所を閉鎖します。
これにより、Xdayまでの取引に関する売掛金と買掛金が確定します。 -
2 債権者への受任通知の発送
債権者と取引先に受任通知※を発送(郵送またはFax)します。
※受任通知とは、その会社(法人)が事業を廃止し、今後、破産手続の申立てを行う予定であること、その手続の代理人として弁護士が受任したことを、弁護士が債権者等に通知することです。
受任通知が取引先や銀行等に送達された後は、弁護士が債権者や取引先等との窓口となり対応します。
ですから、それまで最前線におられた経営者の方は、ひとまずはここで(少しだけ)ほっと一息つくことができます。
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3 従業員の解雇
会社(法人)は事業を廃止した以上、従業員を雇用し続けることができません。
そのため、やむなく従業員を解雇することになります。その際には次の(1)(2)のいずれかの方法で解雇します。- (1) 解雇予告手当を支払う余力がある場合、解雇予告手当を支払い、解雇通知書を交付※して解雇を通知します。
- (2) 解雇予告手当を支払えないケースでは、解雇通知書を交付して解雇を通知するだけになります。
※解雇通知:できれば解雇通知書という書面を用意した方がいいのですが、やむを得ず口頭で解雇を通知する場合もあります。
また、会社(法人)には、解雇日までの給与の支払義務がありますので、事業所内のタイムカードを回収する等して、解雇日までの給料の計算をします。
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4 従業員への今後の手続の説明
従業員への貸与品の回収、私物持ち帰り要請会社から、会社(法人)の事業廃止を知らされ、解雇された従業員は、あまりにも突然のことで、驚き困惑するばかりです。
そこで、解雇するにあたっては、会社(法人)から従業員に対して、会社が破産するに到った事情や、会社の今後の手続、そして従業員らが今後どういう手続を取る必要があるのかについて等を丁寧に説明する必要があります。
この従業員への説明のうち、事業廃止と従業員の解雇の通知は、経営者には大変辛いことだと思いますが、経営者から直接従業員に説明していただくべきだと思っています(勿論、弁護士が立ち会います。)。
それ以外の、今後の会社や従業員の手続については、森法律事務所では、弁護士が従業員に配布資料を用意してご説明し、従業員からの質問にも丁寧に対応しますのでご安心ください。
なお、このとき、従業員から、会社の携帯電話、事務所や車の鍵、セキュリティカード等の貸与品の返却を受ける必要があります。
また、従業員は、(原則として)その後、会社の建物内に入れませんので、建物内の従業員の私物を引き取ってもらう必要があります。 -
5 裁判所に提出する申立書類の作成
Xdayの後は、裁判所に提出する申立書類を準備しなければなりません。
申立書類は弁護士が作成しますが、その準備作業は、経営者と弁護士の共同作業になります。
会社(法人)の規模によっては、元従業員の協力を得て、準備作業を進めます。この準備作業に時間がかかると、債権者や取引先に迷惑をかけてしまいます。
また、何よりも、この準備作業の期間は、経営者やご家族の心労が重なります。準備作業期間が長びく分だけ、再建への一歩を踏み出すのが遅れます。
森法律事務所では、迅速な申立てができるように尽力いたします。
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6 従業員の離職票の作成・交付、社会保険の手続書類の作成・交付
[5]の裁判所に提出する申立書類の準備と併せて行うべき重要な作業として、従業員関係の対応があります。具体的には、以下のものが必要になります。
(1) 給料の計算
(2) 退職金の計算
(3) 離職票発行の準備
(4) 社会保険の資格喪失に関する手続
(5) 源泉徴収票の準備
(6) 住民税の特別徴収異動届※これらの作業は、会社の元従業員の協力を得て、または会社の顧問社労士等に依頼して行うこともあります。
Xday以後は、債権者やその他の取引先だけでなく、元従業員からも、様々な問い合わせがあります。
森法律事務所では、Xday以後は、これらの問い合わせは全て弁護士が対応しますのでどうぞご安心ください。
04 裁判所への破産手続申立て
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1 裁判所に申立書類を提出します。
申立ては、名古屋地裁本庁であれば、当事務所の事務員が裁判所に申立書類を持参し、その他の裁判所では書類を郵送して行います。
ただし、名古屋地裁本庁以外でも、緊急を要する事件の場合は、弁護士が書類を持参して申立てをすることもあります。
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2 裁判所から求められた補充書類を提出します。
裁判所から補充書類の提出を求められることがあります。
その際は、速やかに準備して提出します。
このときも、経営者に協力していただく必要があります。 -
3 裁判所が決定した予納金を納付します。
裁判所は、申立書類を審査して、その会社(法人)の破産事件として、どのような破産管財人の業務が必要になるか等を検討し、管財人候補者を選定します。
そのうえで、裁判所は、納める予納金の額を決定し、代理人弁護士に伝えてきます。
代理人弁護士は、Xday前にお預かりした現金の中から、裁判所に指定された予納金を納付します。※予納金の納付がない限り、破産手続の開始決定は出ません。
森法律事務所では、裁判所に破産を申立てた後の、裁判所や破産管財人候補者からの問い合わせは全て弁護士が対応しますので、ご安心ください。
05 破産手続開始決定
予納金が納付され、裁判所が、その会社(法人)が破産状態(債務超過または支払不能)にあると認めることにより、破産手続が開始されます。
同時に裁判所は破産管財人を選任します。
破産手続開始決定により、会社(法人)は解散し、代表者は代表権を失い、その他の役員もその地位を失います。
会社(法人)の財産の管理処分権は破産管財人の手に移ります。
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1 破産管財人への書類等の引継ぎ
破産の開始決定が出ると、すぐに、申立代理人弁護士は、経営者(代表者)と一緒に、破産管財人の事務所に赴いて、会社(法人)の事情等について破産管財人に説明します。
その際、申立代理人弁護士は、それまでに会社(法人)や代表者の方から預かった書類、印鑑、鍵その他の重要な財産を破産管財人に引き継ぎます。 -
2 代表者その他の役員の破産管財人への説明義務
破産開始決定が出ると、社長(代表者)は会社(法人)の管理処分権を失い、元代表者という立場になります。しかし、だからといって、「会社のことは破産管財人に任せればよい。自分の手は離れたのだからあとは放っておけばよい。」ということにはなりません。
破産管財人は、会社(法人)や債権者と利害関係のない人から選任されます。すなわち、破産管財人は、それまで会社(法人)に一切関与したことのない人であって、会社(法人)の事は元代表者に聞かないと分からないので、元代表者に、破産に到った事情や会社の財産や負債の内容等の説明を求めます。
破産法は、会社(法人)の元代表者(経営者)とその他の元役員に対して、破産手続が開始されてから終了するまでの間、破産管財人に対して、破産に関して説明する義務を課しています(破産法40条)。
そして、この説明義務に違反して、元代表者らが、破産管財人から求められた説明を拒んだり虚偽の説明をした場合には、「3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又はその併科」という刑罰が用意されています(破産法268条)。
もちろん、元代表者らが、破産管財人への説明義務違反で刑罰を科されるのはよほどのレアケースですが、元代表者(経営者)は、破産手続が終了するまでの間、破産管財人からの質問には、誠実に対応する必要があります。
しかし、弁護士である破産管財人からの質問に、元代表者の方が、戸惑ったり、不安に感じたり、一人では対応に困ってしまうこともあると思います。
森法律事務所では、破産手続が終了するまでの間、経営者の不安やご負担が軽くなるよう、弁護士が最後までしっかりとフォローいたします。
私が破産管財人になった破産事件を見ていますと、申立代理人が「破産の開始決定が出たら、申立代理人の業務は終了する。」とでも考えているのか、「開始決定後は元代表者を十分にサポートしていないのでは。」と感じるケースが決して少なくありません。
それでは、経営者の方はとても不安だと思います。
森法律事務所は、破産手続が終了するまで、弁護士が元代表者(社長さん)をしっかりサポートしますので、どうぞご安心ください。
森法律事務所では、初回のご相談を経て、経営者が「破産申立の意思決定」をし、当方が正式に受任したときには、速やかにXdayに向けて綿密な打ち合わせと準備を行います。Xdayにおいては、従業員の方の不安をできるだけ取り除くよう丁寧に対応します。
その後は、できるだけ速く破産手続開始決定が出るよう、迅速にそして遺漏のない申立ての準備を進めます。
また、破産手続の開始決定が出た後も、手続が終了するまでの間、ずっと経営者の方に寄り添いサポートしてまいります。