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会社(法人)の破産申立を検討中、準備中に
やってはいけないこと(注意事項)

破産手続の検討中や準備中に、思わずやってしまったことで、申立ての準備がスムーズにいかなかったり、破産の開始決定が出た後で、破産管財人や裁判所から厳しく非難されたり法的に無効だと言われたりして、大きな問題になることがあります。

このページでは、破産手続の検討中や準備中に注意すべき「5つのNG」について説明します。

01 破産手続を検討中や準備中であることを従業員や取引先等の第三者に話してはいけません。

経営者(社長)は、従業員に対して、会社の破産を考えていることを相談したり、破産を決断したことを知らせてはいけません。

社長から打ち明けられたり相談された従業員は、「会社が破産すると自分は失業してしまう。」と自分のことを考えて混乱し、冷静に対応できなくなります。社長が「この人なら大丈夫だ。信頼できる。」と見込んだ人が、自分の保身のために思わぬ行動に出るということがあるものです。

社長がいくら「君を信用して君だけに話すから。どうか秘密にしておいてくれ。」と頼んだとしても、従業員は一人ではそのような大きな問題を抱えきれません。当然、家族に伝え、友人に言ってしまうでしょう。

また、従業員の中には、「自分が担当する取引先には、迷惑を掛けないように伝えておきたい。」と考え、取引先に話してしまう人がいるかもしれません。

これらの従業員の行動によって、「あの会社は破産するらしい。」という噂が社外に一気に漏れ広まってしまうことになります。

その事実を知った債権者は、自分の債権の回収を図ろうとします。
また、会社の破産により供給がストップすることを恐れる取引先が、金型や機械を引き上げようとします。
(これは取引先に倒産の兆しが見られたときに「やるべきセオリー」ですから、当たり前の行動です。)

そうなると、会社は大混乱になり、思うように破産の準備を進めることができなくなります。
また、会社の財産が散逸してしまう可能性も生じます。

これは、社長が、破産を検討中であることを社外の取引先等に話してしまった場合も同様です。

ですから、社長は、Xday前には、破産手続を検討中、準備中であることを、従業員や取引先等の第三者に話してはいけないのです。

02 一部の債権者にだけ弁済をしてはいけません。

「あの会社にだけは迷惑をかけたくない。」
「親しい身内の者だけには払ってやりたい。」

そう思って、一部の債権者にだけ支払ってしまうことが、ありがちですが、これらはかえって債権者に迷惑をかけることになります。

というのは、会社(法人)が破産状態にあることを知っている債権者に対して弁済をすることについて、破産法が「否認権」という規定を用意しているからです。

破産管財人が否認権を行使して、その一部の債権者に対する弁済を否認すると、その債権者に返還を求めることになります。

債権者が素直に応じない場合には、破産管財人は否認権の裁判を起こすかもしれません。その裁判が終わらない限り破産手続は終わりませんから、破産が終結するまで、いっそう長い時間がかかってしまいます。

また、個人事業主や、経営者が、個人の債務について、事情を知っている一部の債権者にだけ弁済すると、個人の破産手続で免責を受けられなくなることもあります(破産法252条3号)。

このような不利益が生じますので、一部の債権者にだけ支払うことはできないのだと肝に銘じてください。

03 事情を知っている人に財産を安く売却してはいけません。

事情を知っている人に、会社の財産を安く売却した場合も、後に破産管財人が否認することになります。

「安く」ではなく、「相当な対価」で売却した場合も、会社がその対価を隠匿する意思がある等の破産法161条の要件を充たす場合は、やはり破産管財人に否認されることがあります。

一方、事情を知らない人に相当対価で売却することは、否認の対象とはなりません。
ですから、破産の費用を工面するために、事情を告げずに、会社の車を中古車買取業者に売却するとか、保険を解約するといった行為は否認されません。

04 どうせ破産するのだからと、会社の財産を無償で譲渡してはいけません。

会社の財産を無償で譲渡する行為は、相手が事情を知らない場合でも、「無償行為」として否認権の対象となります。
「どうせ破産するのだから、大事にしてくれそうな人に使ってもらいたい」と考えて、事情を知らない人に譲渡する行為は破産管財人に否認されます。

また、会社の債権を免除する行為も「無償行為」として否認権の対象となります。

05 資産を使い果たしてはいけません。

何としても破産は回避したいと考えて、必死に経営を続けたが、とうとう手形が不渡りになり破産状態となった。しかしそれまでに、会社の預金は使い果たし、保険も全て解約している。所有する不動産はあるが、銀行の担保に入っていてオーバーローン状態だ。会社にはもはやお金に換えられそうな財産は全くない。しかも代表者個人や親族の財産まで全て使ってしまった。
そんな事態に陥ってしまうことがあります。

破産の手続をとるためには費用が必要です。
費用がないために破産の手続をとることができないとなると、事業を廃止したうえでそのまま会社を放置するしかありません。
債権者が破産申立をしない限り(「債権者破産」はレアケースです)、その会社は事実上の倒産状態でそのまま放置されることになります。

そうなると、取引先、債権者、従業員に大きな迷惑をかけます。

会社の情報が提供されない取引先は、会社の建物内に預け品があっても勝手に持ち出す訳にはいきませんし、債権者も貸倒処理の時期に迷います。
従業員も、退職に伴う各種の手続が行われないため途方に暮れるかもしれません。
会社に財産がなく、破産手続が開始されたとしても配当ができないような事案(これを「不足廃止事案」といいます。)であっても、破産法によって管理処分権が与えられた破産管財人が選任されて処理されるということは、関係者にとっては大変意義のあることなのです。

また、すでに代表者個人の資産すら使い果たしていると個人の破産申立もできません。

もし、代表者の資産が若干残っていたり、親族で費用を援助してくれる人がいるような場合でも、名古屋地裁は、原則として会社を放置したまま、代表者だけ破産すること(裁判所はこれを「法人放置型」と呼んでいます。)を認めていません。
認められる場合も、代表者個人の破産手続の中で会社の清算も併せて精査することになるので、その分、代表者の予納金の金額が高くなり、個人の破産申立のハードルも上がります。
そのため、経営者やその家族が再生の途を歩むことが難しくなります。

会社と経営者の資産を使い果たす前に、倒産問題に詳しい弁護士にご相談なさってください。

06 その他以下の点にもご注意を!

社会保険料や税金を滞納すること。
社会保険料や消費税等を滞納すると、日本年金機構や国税庁が会社の預金や売掛金を差押えるかもしれません。
売掛金を差押えられると、取引先に「滞納するほど苦しい状況にある。」ということを知られてしまい、関係者に噂が一斉に広がることにもなりかねません。

そして何よりも、判断が遅れることは避けたいものです。
経営判断と同様、破産の判断は迅速に行う必要があります。
一人でゆっくり考えているうちに、あるいは思考停止状態に陥っている間に、事態は悪化していくかもしれません。
一刻も早く、まずは、会社の倒産問題に詳しい弁護士にご相談ください。

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