森法律事務所(愛知・名古屋の弁護士) 愛知県名古屋市

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破産手続きQ&A

このページでは会社(法人)の破産に関する疑問について回答をご用意しています。

01 会社(法人)の破産の決断と破産手続申立の準備について

  1. 会社(法人)の破産手続とは何なのでしょうか。

    破産手続とは、会社(法人)が破産状態にあるときに、裁判所で会社(法人)の清算を行う手続です。

    破産状態にあるとは、会社(法人)が、支払不能または債務超過の状態にあることをいいます。

    会社(法人)が破産状態にあって、債務を弁済できない状態に陥ったとき、自ら裁判所に破産手続を申し立てることを自己破産の申立てといいます。
    会社(法人)が、裁判所に破産手続の申立てをするには、自ら資料などを準備して必要書類を提出する必要があります。裁判所は、会社(法人)が提出した資料を精査して、会社(法人)が破産状態にあると判断すれば破産手続の開始決定を出します。

    会社(法人)自らが申立てる場合の他に、数は少ないですが、債権者も会社(法人)の破産を申し立てることができ(これを債権者破産の申立てといいます)、その場合でも、裁判所が破産状態にあると認めれば、その会社(法人)に破産手続が開始されます。

    破産手続開始決定により、会社は解散し、代表者は代表権を失い、その他の役員もその地位を失います。会社の財産の管理処分権は破産管財人の手に移ります。

    裁判所は、破産手続の開始を決定するのと同時に破産管財人を選任します。破産管財人は、会社の財産と負債を調査し、財産を換価して(お金に換えて)、それを原資として負債を配当・弁済します。

    破産管財人が会社(法人)の全ての財産を換価し、債権者への配当・弁済を終えると、裁判所は破産の終結決定を出して手続を終了させます。これにより会社(法人)は完全に消滅します。

    会社(法人)が消滅するため、債権者に配当できなかった負債も消滅します。

  2. 会社(法人)の破産手続きを取るべきかをどうやって決断したらいいのでしょうか。

    まずは、会社(法人)が破産状態(支払不能または債務超過)にあるかどうかを検討します。

    そのうえで、事業の内容、継続可能性、債権者の数、負債額、税金や社会保険料の滞納状況、いつ資金ショートしそうなのか、財産の内容(特に早期に換価できる財産の有無)、担保の設定状況などをみて、一部の事業の廃止、リストラ等で経費を削減することで残りの事業を継続することが可能か、あるいは事業譲渡、民事再生その他の再建手続が可能か等、破産を回避する方法はないかを検討することになります。

    破産を視野に入れているのであれば、これらの判断をするためにも、できるだけ早く会社(法人)の倒産手続に精通した弁護士に相談することをお薦めします。

    事業を継続する方策を探りながらも、万一に備えて準備をしておけば、破産すらできないという最悪の状態になることを防ぐことができます。

    ところで、会社の破産を決断するには、本来の順序としては、取締役会設置会社の場合は、取締役会を開催して、会社として破産申立の意思決定をする必要があります。
    しかし、多くの中小零細企業では、取締役会設置会社であっても、他の取締役が動揺して混乱が生じることを避けるために、

    1. (1) まずは社長(代表者)が決断する。
    2. (2) 他の取締役にも秘密のまま準備を進める。
    3. (3) Xdayの直前に、他の取締役の同意をもらう。

    という順序で意思決定がなされています。

    どのタイミングで他の取締役に破産の意思を伝え、同意を貰うかについても、慎重に決める必要があります。

  3. 弁護士にはどのタイミングで相談したらいいのでしょうか。

    「もっと早く相談しておけばよかった」と後悔しないために、破産を視野にいれているならできるだけ早くご相談ください。

    すでに、破産を避けられない状況であるのに、ただ延命のためだけに破産を決断できないでいると、その後、費用の準備ができずに、破産手続をとることさえできなくなることも決して珍しいことではないのです。

    破産の費用や手続について理解がないまま「破産だけは避けたいから、弁護士には相談したくない。」と考えるのではなく、会社の再建を目指す場合でも、破産手続には費用がいくら必要なのか等、破産手続のことを知っておいたうえで、事業再建のために奔走することをお勧めします。

  4. 会社(法人)の破産手続のことを相談したり依頼する弁護士はどうやって決めたらいいのでしょうか。

    会社(法人)の経営者は、破産についても、まずは身近な顧問税理士や顧問弁護士に相談されることが多いかもしれません。しかし税理士は破産手続の専門家ではありません。また会社の顧問弁護士が倒産実務に精通しているとは限りません。
    破産手続を依頼する弁護士は、いったん選んでしまったら、準備の途中で変更することは困難です。
    長期にわたって最後まで信頼関係を保ち続けることができる弁護士を選ぶことが大切です。

    以下の観点で、信頼できる弁護士を選んでください。

    1. (1) 本当に破産手続に精通しているか。
    2. (2) 申立代理人として何をどこまでしてくれるか。
    3. (3) 真剣に話を聞いてくれるか。
    4. (4) 従業員のことも丁寧に対応してくれるか。
    5. (5) 費用について合理的に説明してくれるか。
  5. 会社(法人)の破産のことを相談する際に何を用意したらよいでしょうか。

    森法律事務所では、効率的に会社や経営者の方がおかれている事情を理解して、より的確なアドバイスをさせていただくために、会社の事業の内容、事業施設、税金・債務と財産の状況、従業員の状況等が分かる資料をお持ちいただくようお願いしています。

    具体的には、下記のページにご案内のとおりですが、資料の準備に時間がかかるようでしたら、最低限のものとして、税務申告書(決算書、勘定科目内訳書付き)の直近3期分をご用意ください。

  6. 会社(法人)の破産を弁護士に依頼すると何をしてくれるのでしょうか。

    会社(法人)の破産を弁護士に依頼するというのは、破産手続の申立代理人になることを依頼するということです。

    会社(法人)から依頼を受けた申立代理人が、依頼者である会社(法人)のために何をするかは、個々の弁護士によって内容が異なりますが、森法律事務所では、

    1. (1)

      初回のご相談では、以下の点を検討します。
      a 破産の要否の検討
      b 予想される費用をお伝えして破産手続に必要な費用を準備できるかを検討
      c 破産の申立てに必要な準備と破産の検討中に気を付けることをご説明
      d 従業員への対応についてご説明
      e 関係者(関係会社、保証人、代表者、その家族)への影響を検討

    2. (2)

      破産申立の意思決定~正式受任
      代表者が破産申立の意思を固められ、森法律事務所にご依頼をいただきますと正式に受任となり、弁護士が代理人となります。
      Xdayを決定し、Xdayに向けた準備と破産手続の申立に必要な資料の準備を始めます。
      また、従業員を解雇するタイミングなど従業員対応の準備を検討します。

    3. (3)

      Xday
      Xdayには、会社(法人)は事業を廃止し、申立代理人は債権者に受任通知を発送(郵送またはFAX)します。
      多くの場合は、同日に従業員説明会を開き、従業員を解雇して手続を説明します。
      これにより、それまで秘密裏に行ってきた準備作業がオープンとなりますので、弁護士が会社の代理人として、代表者の代わりに債権者や取引先、従業員との対応の窓口となります。
      その後は、裁判所に提出する申立書類の作成・準備を迅速に進めます。
      また、この間に、必要に応じて、適宜会社の元従業員の協力を得るなどして、従業員の離職票の作成・交付、社会保険の手続書類の作成・交付などの従業員関係の対応をします。

    4. (4)

      裁判所への破産手続開始の申立て
      破産手続の申立書類の準備が整うと、裁判所に書類の提出をして申立てを行います。
      申立後に、裁判所から補充書類の提出を求められることもあり、それらが終わり、裁判所が破産手続を開始するのが相当と判断すると、裁判所から予納金の納付を求められます。

    5. (5)

      破産手続開始決定
      裁判所から求められた予納金を納付すると破産手続の開始決定が出されます。
      裁判所は、開始決定と同時に、破産管財人を選任するので、申立代理人は、代表者と一緒に、破産管財人の事務所に赴いて、会社から預かった書類・印鑑その他重要な財産を破産管財人に引き継いで、会社の事情等について破産管財人に説明します。

    6. (6)

      破産手続の開始後
      破産手続の開始決定後、破産手続を進めるのはもっぱら破産管財人です。
      しかし、破産管財人は、会社や債権者と利害関係のない人から選任されますので、会社のそれまでの事情を知りません。
      そのため、元代表者は、破産管財人から会社の財産、負債などについて説明を求められます。元代表者には説明義務があるので、破産管財にからの質問には誠実に対応しなければなりません。
      しかし、弁護士である破産管財人からの質問に、元代表者の方が、戸惑ったり、不安に感じたり、一人では対応に困ることもありますので、森法律事務所では、破産手続が終了するまでの間、元代表者の不安やご負担が軽くなるよう、弁護士が最後までしっかりとフォローいたします。

  7. 会社(法人)の破産にはどれくらいの費用が必要ですか。

    破産手続を取る場合に必要となる費用は、会社のおかれた具体的な状況等によって異なってきます。

    当事務所では、会社の具体的な状況を伺ってから、その会社において想定される費用についてご説明していますが、破産申立に必要な費用としては、以下の3つがあります。

    1. (1) 裁判所に納める予納金等
    2. (2) 弁護士費用
    3. (3) その他の実費

    裁判所に納める予納金の金額は破産申立をした後に、裁判所がその金額を決定します。
    予納金を納付しないと裁判所は破産手続の決定を出してくれません。

  8. 破産の費用をどうやって捻出したらよいのでしょうか。

    破産の費用は、現金でご用意いいただく必要があります。
    会社に現金がない場合は、

    1. (1) 売掛金を回収する
    2. (2) 保険を解約する
    3. (3) 自動車等の資産を売却する

    等、その会社の状況に応じて適切な方法で費用を捻出することになりますが、これは慎重に行う必要がありますので、予め弁護士によくご相談ください。

  9. 会社(法人)の破産にはどういう書類を準備する必要がありますか。

    裁判所に破産申立をするには、各裁判所の書式による申立書、債権者一覧表、財産目録、陳述書等の書面とその裏付け資料の提出が必要です。これらの準備と、補助資料の準備も必要です。

    準備する資料の具体的内容は以下のとおりです。

    a
    債権者
    関係
    請求書、契約書(借入金、買掛金、リースなど)
    b
    税金
    関係
    滞納税金の督促状、納税通知書など
    c
    従業員
    関係
    従業員名簿、賃金台帳、タイムカード
    雇用保険被保険者を確認できる資料
    社会保険の被保険者を確認できる資料
    就業規則、賃金規程、退職金規程など
    d
    財産
    関係
    不動産登記事項証明書、保険証券、売掛金、預金通帳など
    e
    その他
    賃貸借契約書など
  10. 破産のときによく聞くXdayとはどういう日ですか。

    破産手続でのXdayとは、会社の事業を廃止し、その事実を従業員・債権者・取引先に通知する日のことです。
    それまでは混乱を招かないようにと破産の予定であることは誰にも知られないように秘密裏に準備していたものを、Xdayでは関係者にオープンにします。
    ですから、Xday以後に生じるいろいろなことを想定して、Xdayをいつにするかを検討し、決定する必要があります。

  11. 受任通知とは何ですか。

    破産手続での受任通知とは、その会社が事業を廃止し、今後、破産手続の申立てを行う予定であること、その手続の代理人として弁護士が受任したことを、弁護士が債権者等に通知することです。

    申立代理人となることのご依頼を受けると、弁護士は、Xdayに、債権者と取引先に受任通知を発送(郵送またはFAX)します。

    受任通知が取引先や銀行、債権者等に送達された後は、弁護士が債権者や取引先等との窓口となり対応します。

  12. 債権者には会社(法人)が破産の申立をすることをどのように伝えるのでしょうか。

    多くの場合は、代理人は受任通知により、会社(法人)が破産手続をとる予定であることを債権者に通知します。

    また、破産手続が開始されると、裁判所は、(代理人が提出した債権者リストに基づき)債権者に対して、破産手続開始通知書(と債権届出書)を送付しますので、これにより、債権者はその会社(法人)に破産手続が開始したことを知ります。

  13. 従業員には会社(法人)破産をすることをどのように伝えたらいいのでしょうか。

    経営者が会社の破産を決意したとしても、直ちにその決断を従業員に知らせることはできません。従業員に伝えると、たちまち債権者や取引先に広がるリスクがあるからです。

    そのため、従業員には、Xdayに従業員説明会を実施し、破産申立をすることを伝えることになります。
    そこでは、

    1. (1) 会社が破産の申立てを決断し、事業を廃止すること
    2. (2) 全従業員を解雇すること
    3. (3) 従業員の給料、退職金、解雇予告手当
    4. (4) 雇用保険や社会保険の手続
    5. (5) その他

    について、説明をすることになります。

    事業所が複数あるような場合は、Xdayに全員に集まってもらうことが困難です。
    そのときは、事業廃止後に日を改めて、別途「従業員説明会」を実施するなどして情報を伝えます。

  14. 迷惑をかけてしまう債権者の方に、会社の資産を代物弁済したいのですが。

    「あの会社にだけは迷惑をかけたくない。」「親しい身内の者だけには払ってやりたい。」
    そう思って、一部の債権者にだけ支払ってしまうことがありがちですが、これらはかえって債権者に迷惑をかけることになります。

    というのは、会社が破産状態にあることを知っている債権者に対して弁済をすることについて、破産法が「否認権」という規定を用意しているからです。

    破産管財人が否認権を行使して、その一部の債権者に対する弁済を否認すると、その債権者に返還を求めることになります。

    債権者が素直に応じない場合には、破産管財人は否認の裁判を起こすかもしれません。その裁判が終わらない限り破産手続は終わりませんから、破産が終結するまで、いっそう長い時間がかかってしまいます。

  15. その他に会社(法人)の破産の準備中に気を付けることを教えてください。

    破産手続の検討中や準備中に、思わずやってしまったことで、申立ての準備がスムーズにいかなかったり、破産の開始決定が出た後で、破産管財人や裁判所から厳しく非難されたり法的に無効だと言われたりして、大きな問題になることがあります。
    気を付ける点は以下のとおりです。

    1. (1) 破産手続を検討中や準備中であることを従業員や取引先等の第三者に話すこと。
    2. (2) 一部の債権者にだけ弁済をすること。
    3. (3) 事情を知っている人に財産を安く売却すること。
    4. (4) どうせ破産するのだからと、会社の財産を無償で譲渡すること。
    5. (5) 資産を使い果たすこと。
    6. (6) 社会保険料や税金を滞納すること。
    7. (7) 破産手続の判断が遅れること。
  16. 取締役の一人が社外の取引先の役員なので、破産申立の取締役会を開くことができませんが、その場合でも破産の申立はできますか。

    破産手続の申立には、裁判所に、

    1. (1) 破産申立を決議した取締役会議事録または
    2. (2) 全取締役全員の意見一致を証する書面

    を提出する必要があります(名古屋地方裁判所本庁の運用)。

    しかし、取締役の一人が社外の取引先の役員や従業員であるために、事前に破産を申し立てることを説明することが難しい、あるいは取締役の一人が海外にいるといった事情によって、取締役全員の同意を得ることが難しい場合もあります。

    その場合には、取締役の一人(例えば代表取締役の社長)だけが申立人となって、会社の破産手続の申立をするという方法があります。これを「準自己破産の申立て」といいます。

    準自己破産の場合は、破産原因(その会社が「債務超過または支払不能」であること)を疎明する(明らかにする)必要がありますが、逆にいうと、その疎明をすれば足りるということですので、取締役全員の同意が得られなければ破産手続の開始申立ができない訳ではありません。

02 会社(法人)の関係者(代表者、保証人、家族、従業員)について

  1. 会社(法人)に破産が開始すると代表者(経営者)はどうなるのでしょうか。

    会社(法人)に破産手続の開始決定が出ると、その会社(法人)と代表者や取締役らの役員との間の委任契約は終了し、代表者・役員でなくなります。
    破産の開始決定によって、それまで代表者が有していた会社の財産についての管理処分権は、破産管財人に移りますので、それ以降は破産管財人が会社の財産を管理します。

    会社(法人)の元役員らには、破産手続が開始されてから終了するまでの間、破産管財人に対して、破産についての説明義務が課されています(破産法40条)。

    この義務に違反して、元役員らが、破産管財人から求められた説明を拒んだり虚偽の説明をした場合には、「3年以上の懲役若しくは300万円以下の罰金、又はその併科」という刑罰が用意されています(破産法268条)。実際に、元役員が説明義務違反で刑罰を科されることはよほどのレアケースですが、元役員らは、破産手続が終了するまでの間は、破産管財人からの質問には誠実に対応する必要があります。

  2. 会社(法人)が破産すると代表者も破産することになるのでしょうか。

    会社(法人)の破産によって、自動的に代表者(経営者)も破産する訳ではありません。

    しかし、代表者(経営者)は、多くの場合、会社(法人)の債務について連帯保証人になっています。

    代表者(経営者)がその連帯保証債務を弁済できない状態であれば(多くの場合がそうです)、代表者は、会社とは別に自分の債務を整理する手続をとる必要があります。その方法として、個人の破産を選択する場合は、代表者は個人の破産手続の申立てを行うことになります。

  3. 会社(法人)が破産すると代表者の家族はどうなるのでしょうか。

    会社(法人)の破産によって、代表者の家族が自動的に破産する訳ではありません。

    代表者の家族が、会社の債務について連帯保証人となっているケースもあります。
    その場合は、会社が破産すると、債権者は保証人である家族に保証債務の履行を求めてきます。

    保証人となっている家族が、連帯保証債務を支払うことができない場合は、会社とは別に自分の債務を整理する手続をとる必要があります。その方法として、個人の破産を選択する場合は、家族も個人の破産手続の申立てを行うことになります。

  4. 会社(法人)が破産するとその保証人はどうなるのでしょうか。

    会社が破産すると、債権者は保証人に保証債務の履行を求めてきます。

    保証人が、その保証債務を支払うことができない場合は、会社とは別に自分の債務を整理する手続をとる必要があります。その方法として、個人の破産を選択する場合は、保証人は個人の破産手続の申立てを行うことになります。

  5. 個人の破産手続の「自由財産」というのはどういうものでしょうか。

    会社(法人)の破産手続は、会社(法人)の全財産を換価して、債権者への配当・弁済の原資とするのですが、個人の破産手続では、差押禁止財産等は、自由財産といって、債権者への配当原資となる破産財団に組み込まれず、破産者(代表者個人)の手元に残ります。

    また、差押禁止財産以外についても、「自由財産拡張の申立て」をすることで、99万円までの財産自由財産として保持することも認められます。

    自由財産拡張の制度の運用基準は、各裁判所によってまちまちです。
    名古屋地裁の運用基準では、現金を含め99万円の範囲内の財産で、かつ(1)~(5)の財産が、20万円以下の場合は原則として自由財産として認め、20万円を超える場合は、破産者の生活状況や収入見込みに照らして拡張を認めるのが相当か否かを判断することとされています。

    1. (1) 預貯金
    2. (2) 生命保険解約返戻金
    3. (3) 自動車
    4. (4) 居住用家屋の敷金債権
    5. (5) 退職金債権
  6. 会社の債務のために、代表者や家族の不動産に抵当権を設定している場合、会社が破産するとどうなりますか。

    自分以外の債務のために自分の財産に担保を設定している人のことを物上保証人といいます。
    会社の債務のために、代表者やその家族が自宅等に抵当権を設定している場合も物上保証人です。

    会社が破産すると、債権者は、会社に対する債権を回収するために、物上保証人の財産に設定した抵当権を実行(競売にかける)ことができます。
    または、競売にはかけずに、任意売却の方法で、債権を回収することもあります。

    ただし、債権者は、会社の財産や他の物上保証人の財産から会社に対する債権を回収できる場合もあります。
    会社の物上保証人は、債権者から情報の提供を受けて、自分だけが財産を失ってしまったということがないよう交渉する余地がありますので、すぐには諦めないでください。

  7. 会社(法人)の破産では、従業員の対応でどんな問題がありますか。

    会社(法人)の破産は、従業員に多大な影響を与えます。
    会社(法人)が対応すべきものとしては以下のものがあります。

    1. (1) 従業員説明会の実施
    2. (2) 解雇と解雇予告手当の計算・支払
    3. (3) 未払賃金、退職金の計算
    4. (4) 雇用保険(失業保険)の手続(離職票の発行)
    5. (5) 社会保険の手続(資格喪失に関する手続)
    6. (6) 貸与品の回収、私物の持ち帰り要請
    7. (7) 源泉徴収票の作成・交付
    8. (8) 住民税の特別徴収異動届
    9. (9) 資料の準備
  8. 会社(法人)が破産すると従業員の未払給料はどうなりますか。

    従業員の未払賃金のうち、破産手続の開始前3ヶ月間の給料分は財団債権と言って、破産手続の中では最優先で支払われる債権となります。
    残り(3ヶ月前よりも以前)の未払賃金は、優先的破産債権となり、他の財団債権(税金などいろいろなものがあります)の弁済の後、配当手続によって(一般の破産債権よりも優先されて)配当されます。

  9. 会社(法人)が破産すると従業員の退職金はどうなりますか。

    従業員の退職金のうち、退職前3ヶ月間の給料の合計額に相当する額財団債権となり、破産手続の中では最優先で支払われる債権となります。
    それ以外の部分は優先的破産債権となり、他の財団債権(税金などいろいろなものがあります)の弁済の後、配当手続によって(一般の破産債権よりも優先されて)配当されます。

  10. 会社(法人)が破産をする場合は従業員を解雇しなければなりませんか。

    会社は事業を廃止した以上、従業員を雇用し続けることができません。
    そのため、やむなく従業員を解雇することになります。その際には次の(1)(2)のいずれかの方法で解雇します。

    1. (1) 解雇予告手当を支払う余力がある場合は、解雇予告手当を支払い、解雇通知書を交付して解雇を通知します。
    2. (2) 解雇予告手当を支払えないケースでは、解雇通知書を交付して解雇を通知するだけになります。

    解雇は、原則として、会社と労働契約のある全従業員を対象とします。
    正社員、パート、アルバイト、嘱託職員など全ての従業員が対象となります。アルバイトや休職中の従業員等に解雇漏れがないよう気を付ける必要があります。

    解雇の時期や方法等は慎重に判断する必要があります。
    森法律事務所では丁寧にアドバイスしますので安心してご相談ください。

  11. 従業員を解雇する場合には解雇予告手当を支払う必要がありますか。

    従業員を解雇するにあたっては、労働基準法により会社には解雇予告手当の支払義務が発生します。解雇予告手当の金額は、平均賃金の30日分以上とされています(労働基準法20条)。

    解雇にあたって、解雇予告手当が支払えない場合は、裁判所に未払として届け出ます。
    解雇予告手当は、破産手続において優先的破産債権となり、一般の破産債権よりも優先した位置付けになります。

    解雇予告手当は労働者健康安全機構の未払賃金立替制度の対象にはならないので注意が必要です。

  12. 従業員の社会保険や雇用保険の手続きはどうすればよいですか。

    会社が破産する場合も、従業員が雇用保険(失業保険)を受給できるように、会社(事業主)は、ハローワークに、雇用保険被保険者の離職証明書と資格喪失届を提出し離職票の発行を受け、従業員に離職票を交付します。

    なお、従業員が受給申請をした後、倒産や解雇などの会社都合の退職の場合は(受給開始まで)3ヶ月間の給付制限がなく、従業員は、速やかに受給することができます。

    また、従業員は解雇により、社会保険の被保険者の資格を喪失するので、会社は、従業員の保険証カードを(被扶養者のカードと併せて)回収したうえで、日本年金機構名古屋広域事務センター(愛知県、岐阜県、三重県、静岡県の場合)に資格喪失届と一緒に提出します。

    森法律事務所ではこれらの処理についても丁寧にアドバイスしますので安心してご相談ください。

  13. 未払賃金の立替払制度とは何ですか。

    未払賃金の立替払制度とは、企業倒産によって賃金が未払のまま退職した労働者に対し、政府が会社に代わって「未払賃金と退職金の一部」立替払いする制度です。
    この制度を利用することにより、従業員は、破産手続での弁済・配当手続を待たずに、一部の弁済を受けることができます。

    1. (1)

      立替払いの対象となる賃金は、
      労働者の未払賃金(労働者でない役員報酬は対象にはなりません)
      退職日の6か月前から立替請求日の前日までに支払日が到来している未払賃金
      毎月の給料と退職金が対象となりますがボーナスは対象になりません。
      解雇予告手当も対象になりません。

    2. (2)

      立替払いの額は、未払賃金総額の8割ですが、退職日の年齢により限度額が定められています。

    3. (3)

      破産手続開始後に、所定の請求書に破産管財人の証明印をもらって、独立行政法人労働者健康安全機構に対して請求手続を行います。

    立替とは、「会社に代わって国が立て替える」という意味ですから、従業員は、この機構に返済する必要はありません。

    この制度を利用して立替払いを受けられる金額には上限があり、従業員は未払賃金等の全額の立替払いが受けられる訳ではありません。
    立替払いを受けられなかった部分は、破産手続の中で、破産管財人から弁済を受けることになります。

    また、解雇から6ヶ月を経過して破産の申立てがされた場合は、この制度を利用することができません。

03 会社(法人)の破産手続の説明

  1. 破産の申立てをしてから破産開始決定が出るまでどのくらいの時間がかかりますか。

    破産の申立をしてから破産開始決定が出るまでの期間は、裁判所が必要と考える資料が整っているかどうかや破産管財人候補者の都合によっても変わってきますが、多くの場合では、1週間から1ヶ月です。

    緊急性の高い事案で、かつ資料が揃っている場合は、2、3日~1週間で開始決定が出ることもあります。

  2. 会社(法人)が破産すると債権者はどう扱われるのでしょうか。

    破産手続では、債権者は裁判所に破産債権の届出書を提出します。
    破産管財人は、債権者が届け出た債権について、破産債権として認めることができるかどうかを調査・判断(これを債権認否といいます。)します。

    破産管財人が認めた破産債権は、破産管財人が会社の財産を換価して形成した破産財団から配当手続で配当を受けることになります。

    しかし、破産債権の配当は、財団債権と優先債権の全額が弁済・配当された後に、なお破産財団に残りがあった場合に実施されます。

  3. 会社(法人)が破産すると税金はどう扱われるのでしょうか。

    税金(公租)や社会保険料などの公課は、破産手続開始前の1年以内に発生したものは財団債権として扱われ、破産債権よりも優先して弁済されます。

    その発生時期が、破産手続開始前から1年を超えている税金や公課は、優先債権と扱われて、財団債権の全額が弁済がされた後に、破産財団に残りがあれば弁済されます。

  4. 会社(法人)の破産手続で破産管財人が選任されるのは何故ですか。

    破産管財人は、破産手続において、主には、破産会社の負債と財産を調査して、破産会社の財産を換価して(お金に換えて)、換価したお金を原資として、債権者に弁済・配当するという業務を行う人です。

    裁判所は、破産開始決定を出すのと同時に破産管財人を選任します。名古屋地裁の場合は弁護士が選任されます。

  5. 破産管財人にはどういう人が選ばれるのでしょうか。

    破産管財人は、破産を申し立てた会社や債権者と利害関係のない弁護士から選任されます。

    すなわち、破産管財人は、それまで会社に一切関与したことのない人で、会社の事は元代表者に聞かないと分からないので、元代表者に、破産に到った事情や会社の財産や負債の内容等の説明を求めることになります。

  6. 債権者集会では何をするのでしょうか。

    破産開始決定が出て2~3ヶ月後に、第1回債権者集会が開催されます。
    これは、一般的には「債権者集会」と呼ばれていますが、正確には法律上の債権者集会ではなく、財産状況報告集会、債権調査、計算報告集会、破産手続廃止に関する意見聴取のための集会というもので、ここでは、破産管財人が、会社の財産と負債の状況、換価の状況を報告し、届出のあった債権についての認否の結果を報告します。また今後の手続進捗の見込みを説明します。

    債権者は、この集会に出席して破産管財人からの報告を聞き、疑問点があれば質問することもできますが、債権者の多数決で何かを決定するという手続ではありません。
    また、債権者集会に出席しないことで特に不利益があるわけではありません。

  7. 債権者集会では会社(法人)の代表者が裁判所や債権者から厳しく糾弾されるのでしょうか。

    破産手続で、一般に債権者集会と呼ばれている集会は、破産管財人が財産や負債の状況や換価の状況を報告するための集会であり、破産者である会社の元代表者を糾弾するための手続ではありません。

    債権者から元代表者に対して、厳しい意見や疑問が提示されることも稀にありますが、裁判官が主催する手続ですので、暴言や怒号に曝されるようなことはまずありません。
    出席する債権者の数も、通常は多くありません。

  8. 会社(法人)の破産手続では、代表者は協力しなければならないのでしょうか。

    会社(法人)の元役員らには、破産手続が開始されてから終了するまでの間、破産管財人に対して、破産についての説明義務が課されています(破産法40条)。

    この義務に違反して、元役員らが、破産管財人から求められた説明を拒んだり虚偽の説明をした場合には、「3年以上の懲役若しくは300万円以下の罰金、又はその併科」という刑罰が用意されています(破産法268条)。実際に、元役員が説明義務違反で刑罰を科されることはよほどのレアケースですが、元役員らは、破産手続が終了するまでの間は、破産管財人からの質問には誠実に対応する必要があります。

  9. 会社(法人)の破産手続が終了するまでは、代表者は働いて収入を得てはいけないのでしょうか。

    会社が(法人)が事業を廃止し破産手続が開始されると、その代表者は職を失います。生活するために働くことについて、破産法による制限はありません。
    むしろ、破産手続は、代表者の経済的再生のための手続でもありますから、多くの代表者の方は、破産手続が開始されたらすぐに仕事を探して働き出しています。

    ただし、会社の元代表者は、破産手続が終了するまでの間は、裁判所の許可がなければ居住地を離れることができませんから、遠方への転居を伴うような就職は、(全く不可能ではないと思われますが)実際上難しいかもしれません。

  10. 破産手続きが終了するまでどのくらいの時間がかかりますか。

    司法統計によると、配当のある破産事件でも、約65%が1年までに手続が終了しています。
    しかし、破産手続が終了するまでの時間は、破産手続において、換価が難しい財産がある、債権者の債権の確定に時間がかかっている、否認権行使をしている、その他の裁判が継続している等、財産と負債に関する事情によるので、一概にはいえません。

    破産を決意した場合には、後に否認権を行使されるようなことはしない、速やかに申立をする、速やかに開始決定を得ることを目指すべきですが、開始決定後の手続は、破産管財人の手によって進められるため、会社の元代表者や代理人には如何ともしがたいところです。

04 会社(法人)の破産手続の終了後

  1. 会社の破産手続が終了すると会社はどうなるのですか?

    破産手続が終了すると、破産管財人の業務も終了し、それまで解散後も清算の範囲で存続していた会社(法人)は完全に消滅します。
    そのため、配当を受けられなかった債権者の債権(会社の負債)も消滅します。

  2. 会社(法人)の破産手続が終了すると代表者はどうなるのですか?

    会社(法人)の破産手続が終了すると、破産手続で課されていた代表者としての義務も消滅します。

    ただし、代表者が個人で破産手続をとっている場合、会社(法人)の破産手続と代表者の破産手続が同時に終了するとは限りません。
    先に会社(法人)の手続が終了して、代表者の個人の破産手続がまだ終了していないというケースもあります。

    会社(法人)と代表者個人の破産手続が終了し、代表者個人が免責決定を得られると、代表者は完全に負債と義務から免れることができます。経済的再生のために大きく踏み出すことができます。

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